「投資に興味はあるけれど、株は値動きが激しくて怖い」という声はよく聞かれます。一方で、預金だけに頼っているとお金が増えにくく、将来の資金に不安が残るのも事実です。その中間的な選択肢として、多くの人が利用しているのがインデックス投資です。

このページでは、まず株式投資の基本的な考え方を整理したうえで、インデックス投資のメリットとデメリットを初心者向けにやさしく解説します。投資の判断材料として、「自分に向いているかどうか」を考えるきっかけにしてみてください。

株式投資の基本的な考え方

株式は「企業の一部」を持つこと

株式投資とは、上場企業の株を購入して「企業の一部を持つ」ことです。企業が利益を出して成長すれば、株主は次のような形でその成果を分け合うことができます。

  • 配当金:利益の一部を現金で受け取る
  • 値上がり益:株価が上がったあとに売却して利益を得る

逆に、業績が悪化したり、景気が落ち込んだりすると株価が下がり、元本割れを起こすこともあります。株式投資は、企業の成長によるリターンを狙う一方で、価格変動のリスクも引き受ける投資だと言えます。

リスクとリターンは表裏一体

一般的に、期待できる収益(リターン)が大きい投資ほど、価格の変動(リスク)も大きくなります。安全性の高い預金はリターンが小さい代わりに元本が保証される、株式は大きなリターンが期待できる反面、元本割れの可能性もある、といったイメージです。

この「リスクとリターンのバランス」を自分なりに決めることが、株式投資と上手につき合うための第一歩です。そこで役に立つ考え方のひとつが、インデックス投資です。

インデックス投資と個別株投資の違い

インデックス投資は「市場平均」に乗る投資

インデックス投資とは、日経平均株価やTOPIX、S&P500などの「株価指数(インデックス)」と同じ値動きを目指す投資のことです。こうした指数に連動するインデックスファンド(投資信託)やETFを通じて、指数に含まれる多くの銘柄にまとめて投資するイメージです。

日本証券業協会なども、インデックスファンドを「特定の指数に連動する運用成果を目指す投資信託」と説明しており、株式市場全体の平均的な値動きに乗る手法として位置付けています。

個別株投資との違い

個別株投資とインデックス投資には、次のような違いがあります。

  • 個別株投資:特定の企業の株を自分で選び、その企業の業績やニュースを追いながら売買する
  • インデックス投資:指数に連動する商品を通じて、市場全体に幅広く分散して投資する

個別株は企業選びに成功すれば大きな利益を狙える半面、選んだ企業にトラブルが起きると大きく値下がりするリスクもあります。インデックス投資は、一社に集中せず多くの銘柄に分散することで、個別企業のリスクをある程度ならしている点が特徴です。

インデックス投資の主なメリット

値動きが比較的わかりやすい

インデックス投資の値動きは、連動している株価指数にほぼ沿って動きます。日経平均やS&P500はニュースや経済番組でも頻繁に取り上げられるため、指数の動きをチェックすることで、自分の投資の状況もざっくりと把握しやすくなります。

個別銘柄ごとに細かいニュースを追いかける必要がないため、「情報収集にかける時間をあまり取れない人」にとっても取り組みやすい投資スタイルです。

1本で幅広い分散投資ができる

インデックスファンドは、対象となる指数に含まれる多くの銘柄にまとめて投資する仕組みです。例えば、日本株全体に投資する指数や、世界の株式市場全体に分散投資する指数などがあります。

投資信託やインデックスファンドの特徴として、「少ない金額で多くの銘柄に分散投資できる」点は多くの金融機関が強調しています。1社や数社に集中するよりも、複数の企業や国に投資先を分けることで、特定の企業・地域にトラブルがあったときの影響を抑えやすくなります。

運用コスト(手数料)が比較的低い

インデックスファンドは、指数に沿って機械的に運用するため、個別企業の詳しい調査や銘柄入れ替えの頻度が比較的少なくて済みます。その結果、運用にかかるコスト(信託報酬など)が、アクティブファンドに比べて低く設定されている商品が多いのが特徴です。

多くの銀行や証券会社の解説では、インデックスファンドの信託報酬は年率0.1~0.5%程度、アクティブファンドは1~2%程度という目安が示されています。長期で運用するほど、手数料の差はそのままリターンの差につながるため、「コストの低さ」はインデックス投資の大きなメリットと言えます。

少額から始めやすい

多くのインデックスファンドは、100円や1,000円といった少額から積立投資を始められるようになっています。地方銀行やネット証券などの解説でも、「コーヒー1杯分の金額から投資できる」と紹介されることが増えています。

一度に大きな金額を投じる必要がないため、「まずは毎月1,000円から様子を見たい」といった人でも取り組みやすい点が特徴です。余剰資金の一部から、段階的に投資額を増やしていくこともできます。

運用をプロに任せられ、手間が少ない

インデックスファンドは投資信託の一種であり、実際の運用は運用会社のファンドマネージャーやチームが行います。個人投資家は、どのファンドをどの程度の金額で購入するかを決めれば、その後の管理の多くをプロに任せることができます。

売買のタイミングを細かく判断したり、企業の決算を一つ一つチェックしたりする必要がないため、「仕事や家事で忙しく、投資にあまり時間が取れない」という人にも向いているスタイルです。

インデックス投資の主なデメリット・注意点

市場平均以上のリターンは狙いにくい

インデックス投資は、市場全体の平均的な動きに連動することを目指す投資です。そのため、基本的には指数を大きく上回るリターンは期待しにくいという特徴があります。

一方で、アクティブファンドや個別株投資は、銘柄選びや売買のタイミングがうまくいけば、市場平均以上のリターンを得られる可能性があります。ただし、その分リスクも高く、うまくいかなければ平均を大きく下回ることもあります。インデックス投資は、「大当たりは少ないが、大外れもしにくい」中庸のスタイルとイメージするとわかりやすいでしょう。

元本割れのリスクは避けられない

インデックス投資は預金ではないため、元本は保証されていません。世界的な景気後退や金融ショックが起きれば、株価指数そのものが大きく下落し、それに連動するインデックスファンドも値下がりします。

金融庁の資料でも、投資にはさまざまなリスクがあり、元本割れのおそれがあることが繰り返し注意喚起されています。どれほど分散していても、市場全体が下がれば一時的に評価額がマイナスになることは避けられません。

短期間で大きく増やす投資ではない

インデックス投資は、数か月や1~2年といった短期間で大きく増やす投資には向いていません。市場全体の成長は長い時間をかけて少しずつ積み上がるものであり、その途中では何度も上下を繰り返します。

多くの金融機関の解説では、「長期・積立・分散」というキーワードが強調されており、10年、20年といったスパンでコツコツ続けることが前提とされています。短期で結果を求めすぎると、値下がりのタイミングで不安になって売却してしまい、本来期待できたリターンを逃してしまうおそれがあります。

指数の偏りや将来の成績は保証されない

インデックス投資といっても、連動する指数によってリスクや特徴は異なります。例えば、米国株指数に連動するファンドであれば、結果的に米国企業への投資が中心となり、世界全体に満遍なく投資しているわけではありません。

また、過去の成績が良かった指数が、今後も同じように伸び続ける保証はありません。どの指数を選ぶかによって値動きの大きさも変わるため、商品選びの段階で自分のリスク許容度をよく考えることが大切です。

インデックス投資が向いている人・向いていない人

インデックス投資が向いている人のイメージ

  • 長期間コツコツと資産形成をしたい人
  • 投資に使える時間や手間をあまりかけたくない人
  • 短期間で大きく増やすよりも、「平均点でよいので着実に増やしたい」人
  • 個別銘柄の分析に自信がなく、分散投資でリスクをならしたい人

インデックス投資があまり向かないケース

  • 数年以内に大きなリターンを必要としている人
  • 日々の値動きに不安を感じやすく、下落局面で冷静に持ち続けるのが難しい人
  • 企業分析や銘柄選びにじっくり時間をかけ、大きなリターンを追求したい人

どちらが正しいということはなく、自分の性格やライフプラン、投資に割ける時間と相談しながら選ぶことが大切です。インデックス投資を資産運用の「軸」としつつ、余裕があれば一部を個別株やアクティブファンドに回すといった組み合わせ方も考えられます。

インデックス投資には、わかりやすさや低コストといった大きなメリットがある一方で、市場平均以上のリターンは狙いにくい、元本割れのリスクは避けられないなどのデメリットも存在します。メリットとデメリットの両方を知ったうえで、自分に合ったスタイルかどうかを判断していきましょう。

出典:金融庁「教えて虫とり先生(第6回)」日本証券業協会「インデックスファンド」マネックス証券「インデックス投資とは?メリット・デメリットを解説」三井住友銀行「インデックスファンドってなに?」