円高が進むと日本に起こる事ーその背景と対策

円高が家計にもたらすメリットとデメリット

円高は、家計にとってプラスの面とマイナスの面の両方を持っています。

輸入品や海外旅行が割安になりやすいメリット

円高になると、海外の通貨を安く買えるようになるため、輸入に頼っているモノやサービスのコストが下がりやすくなります。たとえば、ガソリンや灯油、食用油、小麦を使った食品、海外ブランド品、海外製家電などは、原材料や製品を海外から仕入れているケースが多く、仕入れ値の面では円高の恩恵を受けやすい分野です。

海外旅行も同じです。現地通貨を手に入れるために必要な円の金額が少なくて済むため、ホテル代や食事代、観光にかかる費用の「体感価格」が下がることがあります。「円高のうちに海外旅行を計画しよう」という声が出てくるのは、このためです。

外貨建て資産や輸出企業への依存には注意が必要

一方で、円高には家計にとっての注意点もあります。外貨預金や海外通貨建ての投資商品を持っている場合、円高が進むと、円に換算した評価額が目減りして見えることがあります。たとえば、ドル建てで10,000ドルを持っていても、1ドル=150円と1ドル=100円では、円に換算した金額が大きく変わります。

また、日本企業の中には、売上の多くを海外で稼いでいる輸出企業も少なくありません。円高が続くと、同じドル建て売上でも円換算の額が小さくなり、企業の利益が圧迫される場合があります。その影響が株価やボーナス、雇用環境などを通じて、間接的に家計へ波及する可能性もあります。

このように、「海外から買う立場」から見れば円高はプラスの面が目立ちますが、「海外に売る立場」からはマイナスの面もあるという点を押さえておくと、ニュースの見え方が変わってきます。

円高が企業活動と日本経済に与える主な影響

円高は、日本の企業活動や経済全体にもさまざまな影響を与えます。

輸出企業には逆風、輸入企業には追い風

自動車や電機、精密機械など、海外向けの輸出が多い企業にとっては、円高は売上や利益を圧迫する要因になりやすいとされています。同じ価格で商品の代金をドルで受け取っても、円に直したときの額が小さくなるためです。「想定為替レート」と実際のレートの差によって、業績予想が上方修正されたり下方修正されたりするニュースを目にするのは、このためです。

一方、海外からの輸入に依存する企業や、海外で仕入れた商品を国内で販売する小売企業などにとっては、円高は仕入れコストが下がる要因になります。原材料費が抑えられれば、利益率の改善や価格据え置きにつながる可能性もあります。

設備投資や雇用、株価への波及もあり得る

為替レートは企業の収益計画に大きく関わるため、円高が急激に進むと、設備投資や雇用の計画を見直さざるを得なくなる企業も出てきます。企業業績の変化は、株価や配当、従業員のボーナスや賃金にも影響しますから、結果的に家計や資産運用にも波及する点は意識しておきたいところです。

ただし、為替の動きだけで経済全体が決まるわけではなく、世界経済の状況や国内の需要、金利や物価など、さまざまな要素が絡み合って景気が形作られています。「円高だから必ず景気が悪くなる」と短絡的に考えるのではなく、複数の要因のうちのひとつとして位置づけておくと良いでしょう。