「投資信託を始めてみようかな」と思ったときに、意外と最初のハードルになるのが「どこで買えばいいの?」という点です。銀行の窓口で勧められた商品をそのまま買うのか、ネット証券で自分で選ぶのか、最近はロボアドバイザーという選択肢も増えてきました。

このページでは、投資信託の主な購入先である「銀行」「ネット証券」「ロボアドバイザー」の違いと、それぞれのメリット・デメリットを整理します。100万円以上の預金があり、「一部を投資に回したいけれど、自分に合う窓口が分からない」という方の判断材料として活用してください。

投資信託はどこで買えるのか

投資信託は「販売会社」を通じて購入する

投資信託は、運用会社が直接一般の投資家に売るものではなく、銀行や証券会社などの「販売会社」を通じて購入するのが一般的です。日本証券業協会などの解説では、証券会社や銀行、郵便局、信用金庫など、多くの金融機関が投資信託の販売窓口になっていると説明されています。

最近では、店舗を持たないネット証券や、スマホアプリで完結するサービスも増えており、「どこで口座を開くか」で投資体験が大きく変わる時代になっています。

代表的な3つのルート

初心者が検討しやすいルートとして、ここでは次の3つに絞って比較していきます。

  • 銀行:普段使っている口座の延長で、窓口やネット経由で購入できる
  • ネット証券:インターネット専業・ネット経由が中心の証券会社
  • ロボアドバイザー:質問に答えるだけで、投資信託の組み合わせと運用を自動でおまかせするサービス

銀行で投資信託を買う場合

メリット:対面で相談できる安心感

銀行で投資信託を買う最大のメリットは、対面で相談できる安心感です。普段から使っている銀行であれば、口座もすでにあり、資金の移動もスムーズです。「いきなりネット証券は不安」「直接話を聞きながら決めたい」という方にとっては、心理的ハードルが低い窓口といえます。

また、店舗での相談だけでなく、最近はインターネットバンキング経由で投資信託を購入できる銀行も多く、オンラインでの取引環境も少しずつ整ってきています。

デメリット:商品ラインナップやコストに注意

一方で、銀行窓口で販売される投資信託は、販売する側の事情も反映されやすく、信託報酬がやや高めの商品や、分配金の多さを前面に出した商品が中心になることもあります。取扱本数もネット証券に比べて少なめなケースが多く、「選択肢の広さ」という点ではやや不利なこともあります。

また、窓口でおすすめされた商品が必ずしも自分にとってベストとは限りません。「なぜその商品なのか」「他の選択肢と比べてどうか」を、自分でもある程度確認しておく姿勢が大切です。

ネット証券で投資信託を買う場合

メリット:低コスト・豊富な商品ラインナップ

ネット証券は、店舗を持たない分、手数料を低く抑えやすく、多くの投資信託を購入時手数料無料(ノーロード)で扱っている会社が増えています。新NISA向けの投資信託についても、主要なネット証券では購入手数料が無料、信託報酬も業界最低水準を競うような状況です。

また、インデックスファンドや低コストの投資信託の品ぞろえが豊富で、「長期・積立・分散」の資産形成に向いた商品を選びやすいという特徴もあります。ランキングやスクリーニング機能も充実しているため、自分でじっくり商品を比較したい人には使いやすい環境です。

デメリット:自分で選んで決める必要がある

ネット証券の弱点は、基本的には自分で情報を調べ、商品を選ぶ必要がある点です。電話やチャットでのサポートはありますが、対面でじっくり相談したいタイプの方には物足りなさを感じることもあります。

画面上に膨大な商品が表示されるため、「どれを選べばいいか分からない」と迷いやすいのも事実です。「長期の資産形成向き」「低コスト」「インデックス型」といった条件でしぼり込み、自分なりの選択ルールを持っておくと、迷いが減りやすくなります。

ロボアドバイザーを利用する場合

ロボアドバイザーとは?

ロボアドバイザーは、オンライン上の質問に答えるだけで、投資信託などの組み合わせ(ポートフォリオ)を提案し、その後の運用も自動でおまかせできるサービスです。アルゴリズムにもとづいて、顧客のリスク許容度や投資期間に合わせた運用を行う点が特徴です。

サービスによっては、積立額の設定やリバランス(資産配分の自動調整)も自動で行ってくれるため、「自分で商品を選ぶのは難しいが、ある程度おまかせで投資したい」というニーズに応えた仕組みといえます。

メリット:設計から運用まで「ほぼ丸投げ」できる

ロボアドバイザーの最大のメリットは、資産配分の設計から具体的な投資信託の選定、定期的な見直しまで、一連のプロセスをほぼ自動で任せられることです。最初に数分の質問に答えるだけで、自分に合ったリスクレベルのポートフォリオが提案されるため、投資のハードルを大きく下げてくれます。

「忙しくて勉強する時間がない」「商品選びで悩みたくない」という人には、入り口として検討しやすい選択肢です。

デメリット:コストはやや高めになりやすい

一方、ロボアドバイザーはサービスとしての手数料(運用報酬)に加え、組み込まれている投資信託の信託報酬もかかります。結果として、インデックスファンドを自分で選んでネット証券で購入する場合と比べると、トータルのコストが高くなりやすいことには注意が必要です。

「時間と手間を節約するためのサービス料」と割り切れるかどうかが、ロボアドを選ぶかどうかの分かれ目になります。

100万円以上の預金がある人は、どう選べばいい?

まずは「どこまで自分で関わりたいか」を考える

どの窓口が正解かは、人によって異なります。まずは次のような自分のスタイルをイメージしてみてください。

  • なるべくコストを抑えて、長期でコツコツ増やしたい
    → ネット証券でインデックス型・低コストファンドを中心に検討
  • 商品を選ぶのが不安なので、プロや仕組みにある程度任せたい
    → ロボアドバイザーや、対面で相談できる銀行や対面証券も候補
  • 最初は対面で話を聞きつつ、慣れてきたらネット証券も使ってみたい
    → 「はじめは少額を銀行などで」「慣れたらネット証券で積立」と段階的に切り替える

「ひとつに絞る」必要はない

投資信託は、必ずしもひとつの窓口に絞らなければならないわけではありません。例えば、次のような組み合わせ方もあります。

  • 新NISA口座はネット証券で開設し、低コストのインデックスファンドを積立
  • 別枠でロボアドバイザーを少額利用して、「おまかせ運用」が自分に合うか試してみる

100万円以上の預金がある場合、その一部を使って複数の窓口やサービスを試し、自分に合うスタイルを見極めていく、という考え方も十分現実的です。

口座選びで最低限チェックしておきたいポイント

手数料・取扱商品の種類・サポート体制

最後に、どの窓口を選ぶ場合でも、次のポイントは最低限チェックしておきましょう。

  • 投資信託の購入時手数料(ノーロードかどうか)
  • 信託報酬の水準や、低コスト商品の品ぞろえ
  • インターネットやスマホアプリの使いやすさ
  • 困ったときにどのようなサポートを受けられるか(対面・電話・チャットなど)

口座を開設したあとに乗り換えることもできますが、積立設定や残高管理の手間を考えると、最初の段階である程度納得できる窓口を選んでおくと後が楽になります。

大事なのは、「なんとなく言われるまま」ではなく、自分なりの基準を持って選ぶことです。そのうえで、預金と投資信託を上手に組み合わせ、お金に少しずつ働いてもらう環境を整えていきましょう。

出典:金融経済教育推進機構「投資信託ってどこで買えるの?」つみたてNISA.jp「新NISA口座はどこがいい?銀行・証券会社を比較」全国銀行協会「ロボ・アドバイザーを巡る法的問題」