「投資信託が気になるけれど、仕組みや種類がよく分からない…」という段階で止まってしまっていませんか。投資信託は、株式や債券などに幅広く分散投資できる便利な仕組みですが、専門用語が多く、最初の一歩でつまずきやすい商品でもあります。

このページでは、これから投資信託を始める人向けに、最低限おさえておきたい「仕組み」と「主な種類」をやさしく整理します。ここで全体像をつかんでおくと、商品を選ぶときの不安がぐっと小さくなります。

投資信託の基本的な仕組み

投資家・運用会社・販売会社・信託銀行の4つの役割

投資信託は、複数のプレーヤーが役割分担することで成り立っています。大まかに、次の4つをイメージしておきましょう。

  • 投資家:あなたを含む、お金を出す人たち
  • 運用会社:集めたお金をどこに投資するか決めるプロ
  • 販売会社:銀行や証券会社など、投資信託を販売する窓口
  • 信託銀行:お金や資産を実際に保管・管理するところ

投資家が販売会社を通して投資信託を購入すると、お金は信託銀行に預けられ、運用会社の指示に従って株式や債券などに投資されます。運用で得られた利益や損失は、投資家が保有する「口数(くちすう)」に応じて反映されるしくみです。

このように、販売・運用・保管の役割が分かれていることで、運用会社が勝手に資産を持ち出したりできないように仕組み上の安全性も確保されています。

基準価額・口数・分配金をざっくり理解する

投資信託には、最低限覚えておきたい基本用語がいくつかあります。

  • 基準価額:投資信託の「価格」。通常、1万口あたりいくらと表示されます。
  • 口数:投資信託を買うときの「数量」の単位。基準価額×口数で、おおよその時価が決まります。
  • 分配金:運用で得た利益などを、投資家に現金で支払うお金(出さないタイプのファンドもあります)。

基準価額は、投資している株式や債券、不動産などの時価に応じて毎営業日変動します。購入時より基準価額が上がれば利益、下がれば損失が出るイメージです。分配金が支払われると基準価額はその分だけ下がるため、「分配金が多い=必ず得をしている」とは限らない点には注意が必要です。

投資対象別に見る投資信託の種類

株式型:成長を狙う「攻め」のタイプ

株式型投資信託は、主に国内外の株式に投資するタイプです。企業の成長や株価の上昇に伴って基準価額も大きく動きやすく、リターンが期待できる一方で、値下がりのリスクも比較的大きくなります。

長期での資産形成を目指す場合、株式型は「資産を増やすエンジン」のような役割を果たしますが、「短期的には大きく上下してもおかしくない」という前提で付き合う必要があります。

債券型:値動きがおだやかな「守り」のタイプ

債券型投資信託は、国債や社債などの債券を主な投資対象とするタイプです。株式に比べると値動きが比較的おだやかで、価格が大きく乱高下する場面は少なめです。

その代わり、大きな値上がりを狙うというよりは、「預金よりは増える可能性があるが、株式よりは控えめ」といった位置づけになることが多い商品です。ポートフォリオ全体の値動きを落ち着かせる役割として組み込まれることがよくあります。

不動産投信(REIT):不動産に分散投資するタイプ

REIT(リート)型投資信託は、オフィスビルや商業施設、マンションなどの不動産から得られる賃料収入などを原資に運用するタイプです。実物の不動産を購入しなくても、小口で不動産投資に参加できるのが特徴です。

株式や債券とは異なる値動きをすることも多く、資産を分散する意味で組み入れられるケースがありますが、不動産市況や金利動向によって価格が動きやすい側面もあります。

バランス型・ターゲットイヤー型:まとめておまかせ分散

バランス型投資信託は、株式・債券・REITなど複数の資産にひとつのファンドの中で分散投資するタイプです。1本である程度の分散を実現できるため、「あれこれ組み合わせるのが難しい」という初心者にも使いやすい商品です。

また、ターゲットイヤー型と呼ばれる商品は、あらかじめ定めた目標年(例:2040年)に向けて、時間の経過とともに株式の比率を減らし、債券などを増やしていくような運用方針を取ります。老後の資金づくりなど、ゴールの時期がある程度決まっている場合に検討されることがあります。

運用スタイル別に見る投資信託の種類

インデックス型:市場平均に連動するシンプルなタイプ

インデックス型投資信託は、日経平均株価やTOPIX、S&P500、全世界株指数などの「指数(インデックス)」と同じ動きを目指して運用されるタイプです。個別銘柄を選ぶのではなく、「市場全体の平均的な動き」に乗ることを目的としています。

銘柄選びを頻繁に行わない分、運用コスト(信託報酬)が比較的低めに抑えられている商品が多く、長期の資産形成に向いた選択肢として注目されています。

アクティブ型:平均を上回る成果を目指すタイプ

アクティブ型投資信託は、運用会社が銘柄を選び、市場平均を上回る成果(超過リターン)を目指すタイプです。成長が期待される企業やテーマに積極的に投資することで、高いリターンを狙う一方、インデックスよりも値動きが大きくなったり、運用がうまくいかずに平均を下回ったりするリスクもあります。

運用会社が頻繁に売買や調査を行うため、信託報酬はインデックス型より高めになる傾向があります。「多少コストが高くても、プロの目利きに期待してみたいかどうか」が検討のポイントになります。

投資地域・通貨で見る投資信託の種類

国内型:日本の株式・債券に投資するタイプ

国内型投資信託は、日本の株式や債券を主な投資対象とする商品です。ニュースで見かける企業名も多く、身近な経済と結びつけてイメージしやすいのがメリットです。

一方で、日本という一つの国に投資が偏るため、日本経済の成長率や人口動態などの影響を強く受けます。国内型だけではなく、海外型も組み合わせることで、国・地域の分散を図る考え方が一般的です。

海外型:先進国・新興国など世界に分散するタイプ

海外型投資信託は、米国や欧州などの先進国、アジアや南米などの新興国の株式・債券に投資するタイプです。国内だけに比べて成長のチャンスが広がる一方、為替レートの変動(円高・円安)の影響も受けるようになります。

先進国に幅広く投資する商品、新興国に絞って投資する商品、世界全体(全世界株式など)をカバーする商品など、ラインナップはさまざまです。「どの地域の成長に期待したいか」「為替リスクをどこまで受け入れられるか」を意識して選ぶ必要があります。

最初の1本を選ぶときの考え方

「自分で説明できるかどうか」を基準にする

初めて投資信託を選ぶときは、「なんとなく人気だから」ではなく、「自分で家族や友人に説明できるかどうか」をひとつの基準にすると失敗しにくくなります。

  • どの資産(株式・債券・不動産など)に投資する商品なのか
  • どの地域(日本・先進国・新興国など)に投資する商品なのか
  • インデックス型かアクティブ型か
  • 長期での資産形成向けか、短期向けか

このあたりを自分の言葉で説明できる商品を選べば、「想像していたのと違う」というギャップを減らせます。

初心者は「長期向け」「分散」「低コスト」を意識する

投資信託は種類が多く、華やかな商品名や高い分配金に目を引かれがちですが、長期の資産形成を目的とする初心者にとっては、次のようなポイントが大切です。

  • 長期保有を前提とした運用方針になっているか
  • 複数の銘柄・地域に分散されているか
  • 信託報酬などの運用コストが低めか

この3つを意識して商品を絞り込むだけでも、「ギャンブル的な投資」からは距離を置きやすくなります。あとは、自分のリスク許容度(どのくらいの値動きまでなら落ち着いていられそうか)に合わせて、株式中心か債券を多めにするかなどのバランスを考えていくイメージです。

投資信託は、一度で完璧な商品を選ばなければいけないものではありません。まずは仕組みと種類の全体像をつかみ、自分が理解できる範囲の商品から少額で試してみることが、長く付き合っていくための近道になります。

出典:投資信託協会「そもそも投資信託とは?」投資信託協会「投資信託の仕組み」