厚労省が示す「パワハラにならない指導」5つのポイント

「叱りたいけど、パワハラと言われるのが怖い」——そんな管理職のために、厚生労働省は「パワーハラスメントにならない指導のポイント」を公表しています。この5つのポイントを押さえれば、適切な指導とパワハラの境界線が明確になります。

No.ポイント具体的な行動
1具体的な行動に焦点を絞る「態度が悪い」ではなく「報告が遅れた」と事実を指摘
2感情的にならない声を荒げず、冷静に伝える
3人格や性格を否定しない「君はダメだ」ではなく「この対応は問題だ」
4改善方法を伝えるダメ出しだけでなく「次はこうしよう」を示す
5伝わったか確認する「わかった?」で終わらず、理解度を確認

特に重要なのは「人格否定をしない」という点です。「お前は本当に使えない」「何度言ったらわかるんだ」といった人格攻撃は、内容が正しくてもパワハラと認定されるリスクがあります。指摘すべきは「人」ではなく「行動」です。

覚えておきたい「かりてきたねこ」

叱る場面で瞬時に使えるフレームワークとして、「かりてきたねこ」という語呂合わせがあります。これを頭に入れておくだけで、パワハラを避けながら効果的に叱ることができます。

頭文字意味解説
感情的にならない怒りを感じても一呼吸置く
理由を話すなぜ問題なのかを説明する
手短に長時間の説教は逆効果
キャラクターに触れない性格や人格を攻撃しない
他人と比較しない「〇〇さんはできるのに」はNG
根に持たない叱った後は普段通りに接する
個別に叱る人前での叱責は厳禁

叱る「場所」「時間」「回数」のルール

叱り方だけでなく、叱る環境も重要です。以下のルールを守ることで、パワハラリスクを大幅に下げることができます。

場所:必ず個室で1対1

人前で叱ることは絶対に避けてください。大勢の前で叱責されると、部下は「吊し上げられた」と感じ、恥ずかしさから恨みを抱きます。実際に、他の社員が叱られているのを聞いてメンタル不調を起こし、パワハラ認定された判例も存在します。叱る場合は必ず個室に呼び出し、1対1で行いましょう。

時間:10〜30分以内

一つのミスについて長時間叱り続けることは、精神的な攻撃とみなされる可能性があります。叱る時間は10〜30分程度に留めましょう。要点を絞って伝え、ダラダラと説教を続けないことが大切です。

回数:一つのミスにつき1回

同じミスについて何度も繰り返し叱ることもNGです。一度叱ったら、その件は終わりにしましょう。「前も言ったよね」「何度目だ」と過去を蒸し返すのは、部下を追い詰めるだけで改善にはつながりません。

叱った後の「アフターフォロー」が信頼を築く

叱り方と同じくらい重要なのが、叱った後のフォローです。叱りっぱなしにせず、適切なフォローをすることで、部下との信頼関係はむしろ深まります。

フォローのポイント

まず、叱った直後から「普段通り」に接することを心がけてください。気まずそうな態度を取ったり、逆に過度に気を使ったりすると、部下も委縮してしまいます。叱る時と通常時でメリハリをつけることが大切です。

また、叱った後に食事に誘ったり、ちょっとした差し入れをしたりするのも効果的です。実は、こうしたフォローの有無は、裁判でパワハラかどうかを判断する際の考慮要素にもなっています。「叱った後にケアがあったかどうか」は、法的にも重要なポイントなのです。

そして、改善が見られたら必ず認めて伝えましょう。「前回言ったことが改善されているね」「最近の報告は早くなった」といった一言で、部下は「叱られた意味があった」と感じることができます。叱ることと褒めることは、セットで機能するのです。