早期退職を決断する前にやるべき3つのこと
早期退職で後悔しないために、応募を決める前に必ず実行すべきことがあります。
1. 65歳までの収支シミュレーションを行う
専門家が推奨するのは、極めてシンプルな方法です。「確実に用意できるお金から、必要な生活費を引く」だけ。
まず、資産を洗い出します。預貯金、退職金の手取り額(税金を引いた後の金額)、その他の資産を合計してください。次に、65歳までの生活費と、65歳以降の老後資金を計算します。
この引き算の結果がマイナスなら、その分を働いて稼ぐ必要があります。田中さんの場合は5270万円の不足。12年間で割ると、年間約440万円。これを毎年稼ぎ続けなければ破綻する計算でした。
「年収550万円を12年間」と聞いて、「それなら何とかなる」と思う人もいるかもしれません。しかし、50代後半での転職で年収550万円を確保し、それを65歳まで維持することが、いかに困難かは前述のデータが示すとおりです。
2. 転職市場での自分の価値を把握する
早期退職に応募する前に、転職エージェントに相談することを強く推奨します。「今の自分が転職した場合、どの程度の年収が見込めるか」を客観的に知ることができるからです。
自己評価と市場評価には、往々にして大きなギャップがあります。大企業で課長職を務めていた人でも、転職市場では「年収400万円台」と評価されることも珍しくありません。このギャップを事前に知っておけば、早期退職の判断も変わってくるはずです。
また、転職エージェントとの面談を通じて、自分に足りないスキルや、市場で求められる人材像を理解することもできます。早期退職後ではなく、在職中にこうした情報を得ておくことが重要です。
3. 最悪のシナリオを想定する
「再就職がうまくいかなかったら、どうなるか」を具体的にシミュレーションしてください。年収が半分になった場合、生活はどう変わるか。1年間再就職できなかった場合、貯蓄はいくら減るか。
楽観的なシナリオだけでなく、悲観的なシナリオも検討しておくことで、より現実的な判断ができるようになります。山口さんのように年収が850万円から300万円に下がる可能性も、ゼロではないのです。
まとめ:大金があっても計画なしでは破綻する
退職金6000万円という金額は、確かに大金です。しかし、田中さんの事例が示すとおり、計画なしに早期退職すれば、この大金も数年で底をつく可能性があります。
本記事のポイントを整理します。
・退職金6000万円でも、手取りは約5170万円。65歳までの生活費を考えると5000万円以上の不足が生じうる
・55歳以上の採用に積極的な企業はわずか1%。50代後半の転職では約半数が年収ダウンを経験する
・「中小企業なら歓迎される」「経験があればなんとかなる」は幻想。バブル世代ほど転職を甘く見る傾向がある
・退職金を「増やそう」としてハイリスク投資に手を出し、大きく減らす人も多い
・早期退職を決断する前に、必ず65歳までの収支シミュレーションと、転職市場での自己評価を行うべき
早期退職の募集は、魅力的な条件が提示されることが多いです。しかし、その条件に飛びつく前に、「本当に自分はこの後やっていけるのか」を冷静に計算してください。
割増退職金の相場は、給与の1〜2年分程度。つまり、会社は「1〜2年分の給与を払ってでも辞めてほしい」と考えているわけです。なぜ会社がそこまでするのか、その意味をよく考える必要があります。
50代での早期退職は、人生を大きく左右する決断です。「退職金があるから大丈夫」という楽観は禁物。数字に基づいた冷静な判断が、あなたの老後を守る唯一の方法です。
参考資料
・PRESIDENT Online「退職金6000万円に飛びついた53歳大手元課長の悲劇」
・日刊SPA!「早期退職した50代、一流企業出身でも再就職先が決まらない現実」
・東洋経済オンライン「中小企業に歓迎されると思った50代男性の嘆き」
・厚生労働省「雇用動向調査」
・マイナビ「転職動向調査2025年版」
